A General Comment on "Gladston Galloza / Madrid" From LAVA |
M001 Minha Rua
今回も前作と同様アルバム制作に入る前、グラストンに、「今ある曲でアルバムに入れたい曲を送って欲しい」とお願いしました。
毎回何故か新曲はMDのエアー録音で送られてくるのですが、全部で15曲入っていた今回のデモMDの1曲目に録音されていたのが、この”Minha Rua”でした。聴いてまず思ったのは”複雑”と”短い”でした。グラストンの全てのデモに言えることなのですが、彼はどうやらパートを繰り返すのが嫌いらしく、サビと言えるものが1回しか出てこないなんていう曲はたくさんあります。よって、彼との仕事でまず僕が最初にやる事は、曲の新しい構成を作り、それを彼に納得してもらうという作業です。僕はデモを1回聴いた時に”Minha Rua”をアルバムの1曲目にしようと決めていたので、ブラジル産テンションコードの雨、嵐のこの曲から、”複雑”と感じてしまった部分を取り払うべく、新たなコーラスパートとコードアレンジ、テンポアップ、そして構成をゼロから考え直しました。今回は、アレンジに関しては、全体的に前作よりも生楽器を多く導入しましたが、特にドラムに関しては、GRETSCH(グレッチ)のオールドヴィンテージドラムVD001/'60sをレンタルして、かなり実験的な作業を繰り返しながら、リズム隊とグラストンの声&ギターとの相性を追求しました(今回ドラムで参加してくれた宮本くんには、1日中リムショットだけを叩かせたりもしました)。とにかく1曲目に関しては”明るく突き抜ける”がテーマだったので、まずは朝一番で聴ける1曲が仕上がったなと思っています。ちなみにこの曲がグラストンの一番新しい曲だそうです。
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M002 : Es Vida
全体にちりばめられたスキャットが印象的な1曲です。グラストンからアレンジのアイデアとして坂本龍一氏の”Vincius Cantu灑ia”を聴かせてもらったのですが、僕はこの曲に関してはストリングスのサンプルが必要と感じていたので、彼のリクエストには答えませんでしたが、グラストンワールドをより広げられる曲にはなったと思います。中盤に出て来るコーラスアレンジを”これはとってもいい”と彼に初めて言われ、ちょっと嬉しかったですね。グラストンはブラジルにいる時にはコーラスアレンジの仕事もしていたそうです。
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M003 : Samba Criolo
グラストンが僕に言ったままを書くと、「LAVAがあまりにブラジル、パーカッション、スキャットってうるさいから、君が大好きな感じの曲を作ったよ。
これはLAVAに捧げる曲さ。ははは(大笑)」だそうです。悔しいのですが、確かにデモで聴いた時点で大好きな1曲でした。特筆すべきはこのギターなのですが、グラストンが弾くこのアルペジオパターンは信じられない奏法で、近くでその指さばきを見ましたが、体の軸はいっさいぶれずに指だけがまるで生き物のように細かく動いていました。アレンジに関しては、もうちょっとうるさく出来たかなとも思いますが、細かく組んだドラムのトラックとピアノの混ざり具合が良かったので、軽快なサンバジャズ風に仕上げました。ちなみに後半のハンドクラップはグラストン自身のものですが、あんなにギターは上手なのに、何故かハンドクラップになると上手くいかないようで何度もやり直していました。おかしいですね。
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M004 : Sonhei
非常にクラシカルで良質なボッサチューンです。こういう曲を聴くとグラストンは素晴らしいメロディーメーカーだなと改めて感じます。前半の誰もが口ずさめる美しいラインと後半の複雑に絡み合って来るリズム。これはまさにグラストンガリッツアという世界レベルのアーティストを表す代表的な1曲ではないでしょうか。
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M005 : Toda Manha
最初は弾き語りで録音しようかとも思ったんですが、途中で中盤のソロパートを作ったので、そこは東京に戻ってからフルートかチェロにメロディーのユニゾンをしてもらおうと決め、最終的にはクリックを聞きながらグラストンには録音してもらいました。余談ですが、レコーディング時は決まって僕とグラストンはランチに出かけますが(スペインでは3時頃食べます)、ふたりでお腹いっぱいになった後(本当にお腹いっぱいになります)、確かすぐにこれを歌ったと記憶しています。僕ならまず無理ですね。
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M006 : Dois Rumos
もともと送られて来たオリジナルからテンポをかなり上げてアレンジされたこの曲は、今回の僕のフェイヴァリットソングです。
この曲に関しては最初から打ち込みのドラムを使おうと思っていましたから、アルバム中では一番クールに聞こえるかもしれません。前作“The Album"ではDesree "I Ain't Movin”を歌ってもらいましたが、 ”Dois Rumos”は僕の中ではその続編的なイメージです。グラストンがちょっと抑えめに歌うこの手のミディアムナンバーは陳腐な言い方ですが本当にかっこいいです。東京に戻ってから、最近僕が一緒に仕事をするオリヴィアにコーラスパートを録音してもらい、Bonzieの弾くB3で鳴らしたオルガンがトラックに躍動感を与えています。一緒にデモ録音の時から協力してくれた若きギタリストShow君のアコースティックギターもひと味加えてくれています。
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M007 : Sabor
この曲は前作"The Album"で録音してきたものですが、何故かアルバムからは外れました(なんでだろう?)。Dance Music Record(DMR)からリリースしたグラストンの12インチシングルに収録する為に東京で再アレンジしましたが、これがなかなかの名曲でした。しかしどうして前回は外したんだと、全くその過程を覚えていない僕はしばし唖然とはしたものの、こうして2枚目に収録出来てほっとしています。曲中のコーラスも僕がアレンジしたものですが、確かスペインでグラストンに一緒に歌おうと言われ、汗をかきかき歌った覚えがあります。
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M008 : Nos
冒頭でも触れましたが、この曲もサビの部分が1回しか出てこないものでした。グラストンには「絶対にいいサビだから3回は繰り返した方がいい」と説得しましたが、何度言っても彼は首を縦にはふってくれません。「1回だからいいのである」。ならばその代わり、1回しかなかったサビを頭に持って来て、そこにグラストンの歌っていたサビのメロディーラインをトランペットで表現してみよう。曲中にもそういう部分を作ってしまおう。そして最後の最後にグラストンの歌うサビが登場する感じで。
やってみたらこれがラストまで楽しみ感の続く構成になり、ラテンジャズ風味のこの曲に心地の良い息吹を吹き込んでくれました。グラストンの曲は全体的に短いので、プロが言うのもなんですが構成の勉強になるんです。
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M009 : Derilio
デモの段階から「変わった曲で面白いな」と思っていました。前作にはなかった曲調で、ブラジリアン3つ打ちファンクとでも言うようなスタイルですが、彼の持つ独特のメロディーラインは、ここでも崩れる事なくその存在感を輝かせています。
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M010 : Asas
この曲も”Derilio”同様、今までのグラストンにはない、ひと味違った作風のものです。このサビなんかはブラジルの真裏にある日本を感じさせる様なラインです。グラストンには「この曲は日本で一番上手いハードロックギタリストに参加してもらい、激しいソロを録音してくれ」と言われましたが、それはどうなんだろうと思い、生音重視のフォーキーな感じにしてみました。でも僕はやっぱり日本人です。このサビ、いいですよね。
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M011 : Que Seja Assim
前作でグラストンのファンになってくれた方々には嬉しい限りのグラストン王道ラインの1曲です。でも録音時にこの曲のコーラスパートを本人が歌わないと言い出して、これは困ったなと。最後の手段として、僕とエンジニアのアンドレスで歌うからとグラストンには休憩していてもらったんですが、見かねたグラストンが飛んで来て、「僕が歌う」と。作戦成功です。
ドラムの音にはとても時間をかけました。
スネア1発1発を生で録音したものの上から、更に違うスネア音を足していき、この曲の持つ優しさを壊さないように細部に渡って組み直しました。何度も聴ける名曲だと思います。
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M012 : Noites
ラストは”夜”というタイトルを持つ弾き語りのナンバーです。グラストンのホームページにこの曲の詩が書き込まれていたそうで、それを書いたのはグラストンがブラジルにいた頃のガールフレンドだそうです。「もう別れて大分経つよ」と僕には教えてくれましたが、グラストンはどういう気持ちでこの詩に曲をつけたんでしょうね。曲もさることながら歌詞が素晴らしいので、僕がここでどうこう言うよりも、是非歌詞を一緒に読んで聴いてみて下さい。
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